映画「あめつちの日々」のはじまり

2011年。私たちが探していたのは「土」でした。風土と人間の暮らし。
撮ってみたかったのはその絶対的存在でした。田や畑で食物をつくる農家、土壁をつくる庭師、
そして日本各地の陶器窯元をゆっくり見て回る時間を必要としました。

2012年冬。京都「しかまファインアーツ」の四釜尚人氏からある窯元の見学に誘っていただきました。
ともに向かったのは沖縄県読谷村、読谷山焼北窯。那覇から読谷村へ車で58号線を北上する途中に
何度か基地に接近します。場所によっては道路の両側がフェンスです。
この圧迫感は何だろうかと疑問を持ちました。体感した事のない日本の景色。
この景色は私にとって初めてみる沖縄本島の実際だったのです。

四名で持つ共同窯「北窯」。沖縄最大といわれる登窯はダイナミックで上へ上へと昇りあがってます。
窯たきは国内外より用意された大量の薪を飲みこみ真黒な煙を吐き出しています。
目の前でみる窯たきは感動的です。陶器に関わる人のずっと続けらえてきた歴史や器量を深く思い、
人間の手づくりとは何と見事なことなんだろうと、私までもが誇りに感じる思い出深い日となりました。

お会いしたのは松田米司氏。
火のもりをしながらゆっくりとした時間に私の問いに答えてくれました。

「土はなくならないのでしょうか?」

「いずれなくなるかもしれないね。自分たちにも責任はある。
だから懸命に喜んでもらえるものをつくろうと思っている」

人間の知恵の大きさは癒しに近いおおらかさとなる。58号の風景を通過し受けた緊張がすっかり消えていきました。
みつけた。と、思ったのです。

それから2015年。
映画「あめつちの日々」は完成にむけて進んでいます。