プロダクションノート – 音録り

梅雨入りの6月。この季節の緑はなんとも綺麗。眺めていると安心する。先週マイクを鞄に入れて4日間だけ長崎を訪問した。港は記憶のまま活動的であり稲佐山も晴れて良く見えた。久しぶりの長崎にて嬉しかったし色んな人にお会いすることもできた。会う人会う人、私のぎこちない話に皆さん付き合ってくれた。この映画を開始して数年たっているのだが、思えば個人的に外で人に会う事がほとんど無くなり、それは関東にいても本作の映画関係者と打ち合わせやご挨拶などに行く事ぐらいしかなく、半分ぐらい人との話しかたを忘れかけているなと思う時がある。

長崎では映画に時間がかかっていることを誰ひとりと責めずにいてくれる。みな笑顔で会ってくれるという事に気がついた。この人に急ぎを求めても仕方ないという半分諦めのような、それが温かい顔つきに変わっているかのようにも見えなくもない。「撮影終了」報告をすると皆さん喜んでくれた。まだ撮ってたんかい、とは誰も言わなかった。

 

「それで今回は何のために長崎へ?」

「音の録音と写真を借りに来ました」

「そうですか、音と写真ですか….」

そんなやり取りを各所で繰りかえし、続いて「ご飯食べてるんですか?」と必ずと言っていいほど心配の言葉をいただく。貧弱な映画作家の印象を植え付けてしまっていると実感した。

 

まあ、その通りなんだけども。

じげもんは温かい。