祖父からの伝言

幼い頃に祖父に言われておぼろげに覚えてる事がある。はっきり記憶していないので、もしかしたら両親からの二重伝言だったかもしれない。はっきりしない理由は、私は祖父と数えるほどしか面会をしていないからだ。

 

「竹生島を大切にしなさい」

 

伝言は有り難いんだけど、なんだかすごく大ごとだ。伝言するんだったらもう少し日常的な事にして欲しい。竹生島は滋賀県琵琶湖に浮かぶ島である。国指定文化財である。島に都久夫須麻神社という神社があり、現在では竹生島神社ともいい、神体は竹生島そのもの。私が大事にしなくても国や県に充分に大事にされているだろうぐらいの事にしか考えていなかった。実際にこの伝言は何十年もずっと頭の隅っこにいたけれど、仕事で近くを通る事があっても私は竹生島に渡る事はなかった。

 

しかしコロナで苦しむ2020年。SNSで竹生島の文字を見つける事になる。

 

すぐに伝言を思い出した。目に留まるというのはこういう事で、何十年という時間がくっついた印象だった。私はそういう時は勇気を出して行動するべきだと思う人である。勇気か….ないなあ。勇気。人はタイミングというかもしれない。勇気を出して初めて竹生島に伺える事になった。

 

 渡しフェリーで20分程。青く青く行渡る湖の中に、白く細長く輝く雲を背負って、ぽっかりと島は現れた。160段を超える階段を登り、寺と神社を見て回る。人気なのだろうかあまりにも人が多いので驚いた。都久夫須麻神社は装飾性豊かな桃山建築。牡丹唐草の彫りが美しい。やや胡粉の白が薄くもなってきている。

 歩きながら普段はとうに忘れてしまっている祖父の薄い薄い記憶を思い出して歩いた。私が生まれた時の見てくれ姿があまりにブサイクだったので、「この子にはお金を貯めておく必要がある」と言った祖父だ。彼から私に関わる伝言はこの2つと、残りもうひとつある。それは生まれたばかりの子供に向かっていうものか疑問だが、日本の出入り口である東京へ行けとの事だった。お金を貯めておく以外は叶えたぞと思い、青や緑にカメラを向けていると青い湖の彼方に伊吹山までが美しく見えている。その風景があまりに見事なものなので、今回の訪問になった機会を頂き深く深く感謝した。

 こんなに晴れたら普段ならパッきりとした画にしてしまうカメラだが、何故か今日は柔らかな画になってる気がする。おかしいなあと薄々思った。そうして空を見上げカメラを覗いていた瞬間、説明し辛いのだけど、湖、山、島、樹々すべてから、何らかのサインを受けたような感じを受けた。ちょっと驚いて黙ってしまった。まあこれは相当な思い上がりの珍事である。こういう事もあるのだろう。

 

 2020年、世界や日本は激震だ。近年まれにみるほど色んな人が平和を祈ってくれている。もっともっと多くの人の祈りや感謝が大きく集まれば、それは人間の実生活に黄泉戻って平和へと導いてくるものだろうか。

もしそうならば、神に届く調に誘導していただいて大勢で祈ったらいいじゃない。そんな事を考えながら帰路のフェリーをぼんやりと待った。

映画完成までもう少し。

 

 

 

 

 

 

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